無糖の日々

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精神と物質 読書

「精神と物質」 立花 隆 & 利根川 進  文春文庫  

分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか?

20世紀後半になって分子生物学は飛躍的な発展をとげ、いずれは生物現象のすべてが物質レベルで説明がつくようになるだろうとの予測すらある。その中で100年に1度という利根川進ノーベル賞論文はどのような意味をもつのか。

  本書は立花氏と利根川氏による対談が書かれた作品である。利根川氏は1987年にノーベル生理医学賞を受賞されており、内容は免疫グロブリンの解明である。解明に至るまで、利根川氏はどのように考えて進路を選んだかが書かれている(※)。

(※) : 本書によれば、氏はかなりの楽天家だそうであらかじめ準備されるようなタイプではないみたいだ。事実予約が二年先まで埋まっている、ダルベッコの研究室も卒業の半年前になってから電話をかけて交渉にあたっている。

 

個人的に

 利根川氏は海外でしかこの研究はやっていないから海外に行かざるをえないという、やりたいと思ったらその軸を曲げない考え方を持っておられる。私にはこの本を読む時期が少し遅かったかもしれないが、研究でどのように思考し、どう動くかという観点は学べると思う。その一つは「何を選ばないか」という視点。研究において、面白い事柄は山どころの数ではない。面白いからこの研究をするという観点だけでは選ぶものが多い上に、すべての研究が社会に貢献できるとは限らない。また、生物の進化にあるように、目的のために進化したという目的志向によって進化の過程が解明されるわけではない。何を研究していくを考える上で、利根川さんは何を選ばないかを大切にされている(①)。選択肢が多い時は何を選ぼうかではなく、何を選ばないかという視点から考えてみることも一つの手であるということだ。

 

※① 図書館の魔女 著 高田大介 の本で、マツリカが「人は選択したものではなく、何を選ばなかったかでその人が顕れる」と手話する場面がある。

 

 

精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか (文春文庫)

精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか (文春文庫)

 

 

 

「何かを発見するということは、研究者の努力の積み重ねだけでできるものじゃないんですね結局、科学、というのは、自然の探求のわけね。ところが、ネイチャーというのはロジカルじゃないんだ。特に生命現象はロジカルじゃない。ロジカルにできていれば、理づめで考えていけば分かるはずだけど、そうじゃない。ネイチャーが今こうあるのはたまたまそうなっているというだけの話なの。こうなった必然性なんてないわけなんですよ。」